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東京地方裁判所 昭和40年(ヨ)2293号 決定 1967年9月01日

債権者 (一二名)別紙債権者目録記載のとおり

右代理人弁護士 尾崎陞

中村厳

榎本信行

右尾崎副代理人弁護士 鍛治利秀

小池義夫

畑山実

佐々木秀典

稲見友之

畑仁

債務者 日本建設機械商事株式会社

右代表者代表取締役 小林文彦

主文

一、債権者らから債務者に対する雇傭関係存在確認の本案訴訟につき判決が確定するまで、債権者らが右雇傭契約にもとづく労働者の地位を有することを仮に定める。

二、債務者は、債権者相原に対しては、昭和四〇年一一月九日以降、その他の債権者らに対しては同年一二月二日以降、債権者らから債務者に対する賃金支払請求の本案訴訟につき判決が確定するまで、一ヶ月につき別紙債権目録記載の割合による金員を毎月末限り仮に支払え。

三、申請費用は債務者の負担とする。

理由

疎明資料によって一応認められる事実およびそれに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

(一)  債務者会社は東京都江戸川区に本店と工場を有し、特殊自動車装置および建設機械の製作修理販売を営む従業員三十数名を擁する株式会社であり、債権者らは、いずれもその従業員であって、かつ従業員の一部をもって組織されている総評全国金属労働組合日本建設機械商事支部(以下組合という)の組合員である。(各債権者の入社年月日は別表のとおり)

(二)  債務者会社は、債権者相原正之に対して昭和四〇年一一月八日、その他の債権者らに対しては同年一二月一日それぞれ解雇の意思表示をした。

(三)  債権者らの賃金は日給であり、毎月二五日〆切、月末払いの約束で、当時の債権者らの平均月収額は別紙債権目録記載のとおりである。

(四)  本件解雇前後の事情

1、債権者らは前記組合を組織して諸活動を続けてきた。

2、債務者会社においては、昭和三九年八月、代表取締役吉野英男がその地位から退き、会社の一資材係で右吉野の甥にあたる富田寛がその後に就いた。会社の実権は依然として吉野のもとにあるにも拘ず、組合との折渉上、このような措置に出たものであるため会社、組合間の交渉の進展が、度々妨げられる結果となった。他面また会社は職制と非組合員により「日友会」なる親睦団体を組織して組合との対立をはかってきた。

3、債権者相原に対し解雇の意思表示がなされたが、右は同人が前記組合に加入したことの故をもってなされたものであるので、昭和四〇年一一月八日、組合は年末一時金要求に、相原に対する解雇の撤回要求をも加えて会社に団体交渉の申入れをしたが交渉は進展せず同月二〇日以後数次の時限ストライキを行った。

4、その直後会社は同月二三日から二五日にかけて、ひそかに、職制と非組合員を使って製品、半製品、機械工具の一部を工場から吉野宅に持出した。

5、会社は、「一一月三〇日付をもって全員解雇し一応事業を閉鎖する」との通告書により債権者らをはじめとする全組合員(相原を除く)に対し、前記二の解雇の意思表示をし、債権者らの就業を拒むにいたった。

6、会社は一方において非組合員に対し、一応解雇するとの書面を回覧したが一二月一日以降、かねて搬出してあった工具類を利用して、吉野宅などで非組合員による操業を継続させ、同人らに対しては従来通りの処遇をしている。

7、更に会社は、翌四一年一月には東京都江戸川区桑川町に仮工場を設け、同四月二〇日からは従前の肩書工場で非組合員による操業をも再開した。

(五)  右のような本件解雇前後の状況からすれば、債権者らに対する解雇の意思表示は、債権者らが労働組合の組合員であることの故をもってなされたものと一応認められ、労働組合法第七条一号違反の行為であり、同条から窺い得る公の秩序に反し無効であり、債権者らは従来通り雇傭契約上の地位を有するものと認むべきである。

(六)  債務者会社は、債権者相原に対しては昭和四〇年一一月九日以降、その他の債権者に対しては同年一二月二日以降、それぞれに対する雇傭契約の終了を主張して賃金の支払をしていないが、このまま、雇傭関係存在確認ならびに賃金支払請求の本案判決確定まで推移すれば、債権者らが労働者として生活費その他の面において生活上著しい支障をこうむること明らかであり、本件仮処分の必要性があるものと言うべきである。

(七)  よって、本件仮処分申請は理由があるのでこれを認容し、申請費用につき民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 浅賀栄 裁判官 西村四郎 森真樹)

<以下省略>

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